研究者「熱田和史」

大切なのは、お客様が
美味しく飲んでくださる酒造り。
これまでの経歴について教えてください。
1994年に琉球大学大学院の農芸化学専攻修士課程を修了し、同年4月に忠孝酒造株式会社に入社しました。2004年には日本醸友会から奨励賞を受賞し、2006年には東京農業大学から醸造学の博士号を取得。さらに、古式泡盛の製造方法に関する研究で日本醸造協会の技術賞も受賞しました。学生時代から発酵微生物の研究に取り組み、卒業論文のテーマも泡盛と麹菌。現在も東京農大と共同で研究を進めています。

「シー汁浸漬」の研究で泡盛メーカーとして初の博士号を取得。東京農大と共同で研究開発したフルーティな味わいを醸し出す新酵母で2024年10月「忠孝30度」はフルリニューアルしました。
泡盛造りの研究者とはどういうお仕事でしょうか?
泡盛の品質と微生物(麹菌や酵母菌)の管理、さらに新たな製品の開発を担当しています。
以前は蔵で実際に酒造りの作業もしていましたが、現在は研究室で菌を管理し、品質向上に取り組んでいます。
微生物の働きは温度や湿度の変化に敏感で、それが泡盛の風味に影響します。菌の状態に応じた最適な環境を整え、どのような香りが生まれるのかを確認するために、製造工程ごとのデータを詳細に記録し、データベースを活用しています。泡盛造りの基本は「化学式」で成り立っており、このデータが品質管理に重要な役割を果たしています。

泡盛造りで大変だったこと、苦労したことはありますか
暑い中でも寒い中でも、季節に関係なく原料処理を行い発酵微生物の環境に応じた作業を行うことです。
菌の種類や工程に合わせた温度管理が必須で、環境を誤ると酸味が出たり不快な匂いが発生し、いわゆる「腐造」となってしまいます。こうした失敗を防ぐために、長年のデータを蓄積したデータベースが非常に重要です。
忠孝酒造ならではのオリジナル泡盛を造り上げること、新しい酵母菌の研究には多くの時間がかかりますが、非常にやりがいがあります。

泡盛造りでのこだわりや大切にしていること、これからの目標について教えてください
お客様が美味しく飲んでくださる酒造りです。特に若い世代にもっと泡盛を楽しんでもらうことが課題で、若い学生の意見を取り入れて味や香りを改良することもあります。
膨大なデータや長年の研究も、最終的にはお客様に満足していただける泡盛を造るためのものです。
おすすめの銘柄、泡盛の飲み方や楽しみ方があったら教えてください。
泡盛の飲み方には「正解」はなく、それぞれが自分の好みで楽しんでいただければと思います。それでもあえておすすめするなら以下のような飲み方があります。
忠孝:ロックや水割り
夢航海:炭酸割り、レモンハイなど
古酒:ロック
寒い季節はお湯割りなど